忍者ブログ
嘘つきパラドクス
「ルルーシュ・ランペルージは嘘吐きである」とルルーシュ・ランペルージは言った。さて嘘か真か?
[16]  [11]  [12]  [9]  [8]  [7]  [6]  [5]  [3]  [2]  [10
2024-11-22 [Fri]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2008-04-10 [Thu]


Lelouch Lamperouge

 ルルーシュ・ランペルージがその知らせを聞いたのは放課後、人払いが済んだクラブハウスでだった。
 常ならば朗らかに自分を呼ぶミレイが、硬質な声で「殿下」と呼んだ時点で語られる内容が己の出自に関わる事であるのは察する事が出来たが、続いた言葉はまさかと思わせるもので、鷹揚に構えていた彼が椅子を蹴立てて立ち上がったのも無理は無い。
「………何といった、ミレイ」
 思わず過去の口調に戻ったルルーシュに、此方も過去の如く膝を付き頭を垂れながら、ミレイは再びその言葉を口にした。
「明後日、本国よりルルーシュ・ヴィ・ブリタニア殿下がユーフェミア殿下の補佐官としてご来臨されるとの事です」
「それは確かなんだな」
「はい。本家よりルルーシュ殿下の歓迎と傍仕えの手配を命じられました」
 言葉を聴きながら乱暴に体を椅子に投げ出す。
 ルルーシュ。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。何てことだと息をつけば、気遣う視線が見上げてきた。だがそれに構う間はない。明後日とはまた急な話だ、否、急すぎる。
 何より。
「宰相の補佐官として地盤を固めたあれを、シュナイゼルが手元から離すとは思わなかったな…。やはり枢木スザクの騎士就任が効いたか」
「そのようです。第二、第七、第八皇妃とその親族が宰相閣下に詰め寄った模様で」
「第三皇妃は」
「ユーフェミア殿下が先走っただけで、自分は騎士就任は認めていないと広言しているとの事です。間違いがあった所で庇護をする気もない、と」
「権力からなる甘い水を貪るのに必死な皇妃殿下に相応しいコメントだな、反吐すら出ん」
 侮蔑を隠しもしない声が生徒会室を舐めた。
 だが、そんな事に拘る時間は残されていなかった。
 来訪するルルーシュ・ヴィ・ブリタニアがもしもメディアに姿を見せれば、今ここにいるルルーシュとの関わりを探るものが必ず出てくるだろう。それはまずい。うっかりなどというレベルではない身分露呈の危機だ。せめて一月、最低でも一週間あればぎりぎりであってもどうにか手を回せたものを、たった一日の猶予で出来る事など限られているではないか。
 だからといって手を拱いている暇もない。
「……潮時か」
「っ、」
「来訪の意図を考えれば、あれが外に顔を見せる事はないだろうが、最悪副総督交代のシナリオまで組まれていると考えるべきだろう。ユーフェミアがボロを出さない事を祈るばかりだが、どうにも不安が残るからな。それにあれの顔が完全に伏せられる事も無いだろう…裏では既に出回っていると考えていい。そうなっては……ナナリーに何があるか解らん」
「…殿下」
「政庁にも既に伝達されているか………もしあれの姿をあいつが見たら…少々煩くなるな。まあ今のあいつは簡単に動けないだろうから後回しでもどうとでもなる」
「枢木スザクに関しては私にお任せを。如何様にでもしてみせます」
「くれぐれも気を抜くなよ、あいつの鼻はコヨーテ並、しつこさはスッポンとタメを張る」
 衣擦れだけを供にルルーシュが立ち上がった。一歩遅れてミレイも立ち上がる。
 そのまま生徒会室の入り口に向かう背から声だけが放り出された。
「ルーベンに会いたい」
「伝えます」
 深く頭を垂れ、ひっそりと唇を噛み締めるミレイだけを残し、扉は閉じられた。
PR
COMMENT
Name
Title
Color
Mail
URL
Text
Pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret
TRACKBACK
TrackbackURL:
Copyright © 嘘つきパラドクス All Rights Reserved.
PhotoMaterial by Joujou  Template by Kaie
忍者ブログ [PR]