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嘘つきパラドクス
「ルルーシュ・ランペルージは嘘吐きである」とルルーシュ・ランペルージは言った。さて嘘か真か?
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2008-04-08 [Tue]


写真


 執務室へたどり着くと、傍付きのメイドにお茶を頼んで、ユーフェミアは柔らかな物腰でソファーに腰掛けた。そうして傍に立つスザクにも座るよう目で示し、小さく息をつく。
「お姉様も悪気がある訳ではないの。私の至らなさの為に嫌な思いをさせてごめんなさい」
「大丈夫。きちんと解ってるよ。それに、ユフィだって頑張ってるんだから、そんなに卑下する事ないよ」
 ありきたりの言葉しかかけられないスザクにも、ユーフェミアは嬉しそうに微笑む。苦しいのはスザクだけではないのだ。寧ろスザクを選んだ彼女こそが苦しい立場に追いやられている。ましてや今回の補佐官派遣はどれほどの烙印を彼女に刻むのか。予想も出来ない未来にスザクの腹の底が重く燻る。
 しかし、そんなスザクに気づいたのかユーフェミアは思ったよりも明るい声で笑った。
「大丈夫です、私は大丈夫。だからそんなに重く考えないで」
「うん…」
「それに、お姉様や皆はああいうけれど、私は補佐官の事は余り心配していないのよ。スザクの事をやめさせるなんて、きっと有り得ないわ」
「随分とはっきり断言するんだね?」
 先程のコーネリアの反応、特派でのセシルやロイドの様子から比べ、ユーフェミアは奇異に取れる程に明るすぎた。彼女にとって補佐官派遣は陰鬱なものではないようだ。寧ろ歓迎するような微笑。
 首を傾げるスザクに、メイドが配したティーカップを手に微笑んで、まるで取って置きの秘密を告げる様に囁く。
「明後日いらっしゃる補佐官を、私もお姉様も良く知っています。彼はナンバーズを否定しない人だし、不条理な事で人を追い詰めるような酷い事もしないわ。ただ、シュナイゼル義兄上の派閥に属していると目されているし、派遣のきっかけがきっかけだったものだからお姉様もちょっと気を揉んでおられるだけなのよ」
 くすくすと笑うユーフェミアは相変わらず愛らしく美しい。そしてその美しさに見合うだけの爆弾を、彼女は落とした。
「それにね、これはきっと貴方にも朗報だと思うのだけれど。補佐官の騎士は貴方と同じナンバーズだそうなの」
「え、……ええぇっ!!?」
 思わず声を上げ立ち上がってまで驚愕を示したスザクを誰も責める事は出来まい。何せ現在進行形で非難の真っ只中にある身だ、そんな彼らと同じ立場にいる者が本国からやってくるという。これで驚かずして何に驚くというのか。
 しかし、ふと気づく。騎士を持つという事は―――。
「あの、ユフィ。騎士を持っているって事は、補佐官はもしかして、皇族なのかい?」
「ええそうよ。あら、言ってなかったかしら」
「うん」
「そう、そうね。補佐官がいらっしゃるって事しか告げていなかったわね。ごめんなさい。補佐官は皇族です。私より一つ年上のお義兄様よ」
 言いながら、ローテーブルに放置されたままの書類が差し出された。幾分か分厚いのは、彼がこれまで行った政策やエリア平定の功績、彼の擁する親衛隊などの情報も纏められているからだろう。
 だがそんなことは、表書きをめくった途端全て吹き飛んだ。
 がちりと音を立てて固まったスザクに、紅茶と共に供された焼き菓子を口に運んでいたユーフェミアが首を傾げる。
「…どうかしましたか?」
「………」
「スザク?」
 いつもなら清冽な声が返ってくる筈の問いかけも、今は無く。訝しげな視線を向けてもやはり彼の視線は書類の二枚目から動く事はない。
 さて何が記されていたかしら、と先に目を通した者としてその表記内容を思い出す。二枚目という事は補佐官の身上書の筈。記されているのは名前や家族構成などと、あと―――。
「写真?」
「っ!」
 びくんと肩を跳ね上がらせ、スザクが顔を上げた。その表情は凄まじく混乱に満ち満ちて、だが一番大きく占めているのは、焦燥、だろうか?
「あの、あの殿下、この方は」 
 何が言いたいのか、それきり口を開閉するに留まり、再び視線は手元へ。
 よくわからないが、取り敢えず問いに素直に答えるべく、ユーフェミアは口を開いた。
「美しい方でしょう? その方は、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。今は無き故第五皇妃マリアンヌ様の長子で、第十一皇子。その髪の色とお父様から下賜された象徴の薔薇から、皆には『黒の皇子』と呼ばれているわ」
 ユーフェミアの声がスザクの脳を通過していく。





 そこに写っていたのは、紛れも無く彼の幼馴染だった。
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