2008-05-01 [Thu]
仮面繋がりのアレで相当アホなすんごい一発ネタです。
原作も大好きです。
キャラ崩壊が当たり前です。
原作も大好きです。
キャラ崩壊が当たり前です。
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「覚悟するがいいご主人様、今日からこの私がみっちりとご奉仕してやろう!!!」
なんて叫んで現れたのは、チューリップ型フルフェイス黒仮面に黒いマントに身体ぴっちりの黒いボディスーツ、そしてメイドさんがつけてるようなひらひらエプロンをつけた怪しい男だった。
仮面のメイドギアス
(笑うところ)
枢木スザクはアッシュフォード学園に通っている高校二年生だ。因みに得意科目は体育、苦手科目は理数系と根っからの体育会系。本人曰く『平々凡々な一庶民』、しかしその名が示すとおり、彼の父は日本でも有数の財閥である枢木財閥の現当主・枢木玄武であり、いずれはスザクも父に続いてキョウト六家の一員として迎えられる事になっている。
しかし、スザクはそんな自分の立場を嫌っていた。数年前事故で亡くなった母はおっとりとしてはいたが決して贅沢をする人ではなく、仕事に忙しく家にいない父よりもそんな母に影響されたスザクは、普通に学校を出て普通に会社に勤め普通にお嫁さんを貰って普通に子供を作って普通に年を取って普通に墓に入る、という、余りに所帯じみたというか庶民じみたというか、平凡な夢を抱いていた。
この年でこの夢、と思われるかも知れないが、政治家の妻としてあれこれと苦労をする母の背中を見ていれば、嫌でもそうなるのかもしれない。
という訳で、スザクは早々に家からドロップアウトしようとした。
その手始めとして高等部に上がると同時に『世間を見る』という逃げ口上で一人暮らしを始めたものの、17年男子厨房に入らずを地で生きてきたスザクに家事の手腕がある訳も当然無い。
見事に与えられた一軒家をごみ屋敷と変え、危うくワイドショーネタにされそうになったところを玄武の手配した二人のハウスメイドによってギリギリ助けられた、
の、だが。
片や、ほんわりとした笑顔に癒しの極意が秘められているとしか思えない、ミルクティ色のふわふわの髪と菫色の瞳が綺麗な、スカートのレースもエプロンのフリルも何もかもが可憐な美少女。
片や、何がどうやったらそんなデザインを思いつくのかと思わせるつんつんとした攻撃的な仮面とマント、そして凹凸の見られない縦にひょろ長い身体にぴったりと張り付くボディスーツを纏い、唯一メイドの証明であるようにひらひらエプロンをつけた、変態仮面。
内心でドン引きしながらも父親に、庶民の生活にメイドは(いや、前者のメイドさんならいいかなーと思ったのは当然だろうが)必要ないと訴えても、最早決定事項であり、彼らを受け取らないなら家に連れ戻されるとなっては、流石のスザクも言葉を失わざるを得ない。
しかもお目付け役を自称して従姉妹の神楽耶までやってきたから、さあ大変、である。
こうして、枢木スザクの長くて短い一年が始まった。
仮面の下を見たスザクがルルに惚れちゃって云々なネタまで考えたけど面倒になってここで放置。
寧ろ誰か書いてくれ。
なんて叫んで現れたのは、チューリップ型フルフェイス黒仮面に黒いマントに身体ぴっちりの黒いボディスーツ、そしてメイドさんがつけてるようなひらひらエプロンをつけた怪しい男だった。
仮面のメイドギアス
(笑うところ)
枢木スザクはアッシュフォード学園に通っている高校二年生だ。因みに得意科目は体育、苦手科目は理数系と根っからの体育会系。本人曰く『平々凡々な一庶民』、しかしその名が示すとおり、彼の父は日本でも有数の財閥である枢木財閥の現当主・枢木玄武であり、いずれはスザクも父に続いてキョウト六家の一員として迎えられる事になっている。
しかし、スザクはそんな自分の立場を嫌っていた。数年前事故で亡くなった母はおっとりとしてはいたが決して贅沢をする人ではなく、仕事に忙しく家にいない父よりもそんな母に影響されたスザクは、普通に学校を出て普通に会社に勤め普通にお嫁さんを貰って普通に子供を作って普通に年を取って普通に墓に入る、という、余りに所帯じみたというか庶民じみたというか、平凡な夢を抱いていた。
この年でこの夢、と思われるかも知れないが、政治家の妻としてあれこれと苦労をする母の背中を見ていれば、嫌でもそうなるのかもしれない。
という訳で、スザクは早々に家からドロップアウトしようとした。
その手始めとして高等部に上がると同時に『世間を見る』という逃げ口上で一人暮らしを始めたものの、17年男子厨房に入らずを地で生きてきたスザクに家事の手腕がある訳も当然無い。
見事に与えられた一軒家をごみ屋敷と変え、危うくワイドショーネタにされそうになったところを玄武の手配した二人のハウスメイドによってギリギリ助けられた、
の、だが。
片や、ほんわりとした笑顔に癒しの極意が秘められているとしか思えない、ミルクティ色のふわふわの髪と菫色の瞳が綺麗な、スカートのレースもエプロンのフリルも何もかもが可憐な美少女。
片や、何がどうやったらそんなデザインを思いつくのかと思わせるつんつんとした攻撃的な仮面とマント、そして凹凸の見られない縦にひょろ長い身体にぴったりと張り付くボディスーツを纏い、唯一メイドの証明であるようにひらひらエプロンをつけた、変態仮面。
内心でドン引きしながらも父親に、庶民の生活にメイドは(いや、前者のメイドさんならいいかなーと思ったのは当然だろうが)必要ないと訴えても、最早決定事項であり、彼らを受け取らないなら家に連れ戻されるとなっては、流石のスザクも言葉を失わざるを得ない。
しかもお目付け役を自称して従姉妹の神楽耶までやってきたから、さあ大変、である。
こうして、枢木スザクの長くて短い一年が始まった。
仮面の下を見たスザクがルルに惚れちゃって云々なネタまで考えたけど面倒になってここで放置。
寧ろ誰か書いてくれ。
2008-04-24 [Thu]
「ルルーシュ」
アリエスの離宮へ戻る途中、背後からの声に足を止める。促されながら向き直り、右手を騎士に、左手で杖を支えにゆっくりと立礼したルルーシュを、シュナイゼルは柔らかな微笑で見つめた。
「調子はどうかな、仕事の方は上手く片付きそうかい?」
「僕で決済が可能な仕事は全て終わらせてあります。あとは、取り掛かっていた案件の引継ぎと、すり合わせで終わりです。予定通り、明日の午後一番の便で出発出来るかと」
「そうか…………いや、エリア11行きのせいで忙しくしているのは解っているが、やはりどうしても話がしたくてね。通達を与えてから二日間、全く話せなかっただろう?」
だから一緒に部屋まで行ってもいいかな? 言いながら騎士に預けていた手を取られた為断わることは出来ない。元より断わる理由もないのだが。脇に退き、そっと背後に着いた騎士に小さく頷いて、ルルーシュは再び足を進める。立ち止まっている時間も勿体無かった。
突然の上位皇族の出現に離宮の侍従たちは驚愕を見せたがそれも一瞬、すぐに帰還した主と共に迎えた。てきぱきとシュナイゼルを持て成す侍従たちを横目に、取り敢えず着替えだけは済ませて戻る。着替えで乱れた髪を騎士に整えられながらソファに腰掛けるとと、笑いが前から漏れた。羞恥に頬を染め、思わずずれてもいない眼鏡を直す振りで顔を隠したが、目の前の人物には通じる筈も無い。
「済まないね、急かしたようで」
「いえ、こちらこそ済みません。わざわざ閣下が」
「ルルーシュ」
「あ……異母兄上が時間を割いてくださったのに、暢気に着替えなど……」
「いいんだよ、本当なら君を休ませてやるべきなんだろうけれど、ね…」
酷く申し訳なさそうに告げるシュナイゼルに、背後で騎士が頷いた気配を感じてしかめ面で振り返る。直ぐそ知らぬ顔をされはしたが、ぎゅっと眉を寄せると小さな声で「申し訳ありません」とだけ告げられた。それだけで首が飛ぶ不敬とされるだろう行為を、しかしシュナイゼルは苦笑する事だけで流す。
「じゃあ早速本題に入ろうか、君をいち早く休ませる為にも」
「申し訳ありません……」
「謝らなくていいよ。……今回は急な話で本当に申し訳ないと私も思っているのだよ。確かにユフィならこういう選択もするかもしれないと思っていたけれどね、その、まさかいきなりくるとは思わなくて」
「それは…十分に予測できたことですよ。まして今回はユーフェミアでん「ルルーシュ」…ユフィ自身がコーネリア異母姉上についていくと言い出した訳ですから、あの性格、主張から鑑みても確立としては低くて五割、高ければ八割」
「ある意味では自明の理だったという訳か。なるほど読みきれなかった私達――あるいはコーネリアの失態かな」
「普通ならそれも三割程度まで確立を落とせた筈なんですが……まさかここまで要素が重なるとは誰も思いませんからね」
「全く同感だ。しかし…まさかそれで君の元へ飛び火するとはね……」
お互いに苦笑とため息を洩らし、紅茶を一口。
水面から視線を上げると菫色の瞳とかち合い、思わず片眉を上げて笑う。
「仕方ないですよ。僕の騎士はナンバーズでありながらの選任騎士として……そして戦場でも名が知れています。皇妃方はどうかは知りませんが、少なくともオズワルド侯爵やマクニーニル伯爵は、純粋に教育係として僕に依頼をされていますから、決して悪感情だけで名指しされた訳ではありません」
「それは私も解っているよ。だが、ね……ノーマン侯爵を筆頭にしたあの派閥は、これを機にエリア21に干渉しようとしている」
「21での僕のやり方を気に入らないというのも理由ですか……それについてはもう根回しが済んでいるのでご安心ください、余計な手間は掛けさせません」
にこりと笑うその顔は、若干十七歳で帝国宰相の補佐官として立つに相応しい覇気ある笑顔だ。
だがすぐにそれもへにゃりと崩れる。
「とはいえ、思った事を正直に申しますと、今回の事は仕方ないと思います。あらゆる事象がこの事態を引き起こしてしまった訳で」
「そう、だねえ……特派の派遣もそうだし、黒の騎士団の出現、クロヴィスの死、デヴァイサーの素質、ランスロットの活躍」
「今回に限ってユフィが同行した事もそうです。更に彼女の癖が原因でうっかりと知り合ってしまった事、ユフィが彼を気に入った事、目に見えて解りやすいブリタニアの差別主義とそれに相反するユフィの理想、騎士としての条件を満たせる資質……」
「せめてそれぞれ単体だけならかわす事も出来た事がここまで重なると、もうどうしようもないね。これもあの子の成長の一環だと思って受け止める事にするよ…………ただ、」
かちゃりとカップをソーサーに戻し、シュナイゼルは組んだ膝の上で頬杖をつく。薄く伏せられた菫色の瞳が僅かに鋭い光を宿した。
「それが私の片腕を捥ぐ事になるというなら、少々お仕置きも必要になるかな」
「……異母兄上……」
「安心をおし、私に出来る限りの手配はさせてもらう。だからルルーシュ、君は必ず戻っておいで―――例えエリア11を……ユフィを見殺しにする事になってもね」
テーブル越しに伸ばされた手に頬を擽られ、慈悲に満ちた笑みで見つめられて、ルルーシュは柔らかな笑顔でそれに頷いた。
それがルルーシュの選択だった。
2008-04-18 [Fri]
某MADに触発されてトレスしてみた。
2008-04-17 [Thu]
ブリタニア皇宮においてもっとも有名な事件は、第五皇妃マリアンヌが殺害された『アリエスの悲劇』である。
庶民出でありながら騎士候となり、皇帝に召し上げられ皇妃にまでなった女性。彼女が、主義者によるテロリズムによって殺害された事件は、七年経った今も尚国民の間で語り継がれている。更に彼女の子息と息女が開戦間近のエリアへと送られ命を落としたという事実もその悲劇性を助長する手助けとなり、未だ止まぬ国民の悲憤の声からも、彼女がどれほど国民に愛されていたのかが伺えるものだ。
だが、その悲劇の前にもう一つ、悲劇があった事は余り知られていない。
第七皇妃暗殺未遂事件。
『アリエスの悲劇』のほんの一週間前に起きたその事件は、あくまで未遂であったが故に後に続いた事件に隠された。
「寧ろ意図的に隠蔽されたのだと、俺は思っている」
呟く暗い声は明らかにその事に怒りを抱いているものだ。ぎり、と奥歯を噛み締める様子に、恐らく彼の推測こそが事実なのだろうと察して手を強く握った。
「あれが起きたのは、第七皇妃の出産を祝う為のティーパーティだ。産まれたのは女児で、継承権も与えられなかったが、第七皇妃は伯爵の出だったからな。後ろ盾になった貴族や親しくしていた皇妃達によってセッティングされた。意図としては、他の(皇帝に相手にもされていない名ばかりの)皇妃達に、彼女は望まれる皇妃であるという事を見せ付ける為のものだった」
中心になったのは第二、第三、第八皇妃と第七皇妃の後ろ盾の貴族達で、彼らは正に皇宮の権力争いのトップランカーでもあった。
「母上は最初、お祝いの言葉を伝えるだけにしようと思っていらした。第七皇妃は母上とは関わりたくないと明言していたからな。だが、パーティの前日になってごり押しされたんだ」
是非ご子息、ご息女と共にいらしてほしいと、第七皇妃の侍従は告げた。
疑問をはさむ事は許されなかった。
「結局母上は頷かざるを得ず、俺達は気乗りもしないティーパーティに参加する羽目になった。当然、視線は冷たいものだったよ。子供の披露だというのに俺達は顔を見るどころか近付けもしなかった。まあ、見たいとも思わなかったが」
マリアンヌは他の皇妃に連れられてテーブルについていたが、ルーシウス達は誘われもしなかった。仕方なく三人は遠巻きに母の様子を伺いながらも庭の隅で大人しく遊ぶ事にした。機転の利いたルルーシュが携帯用のチェスボードを持ってきていたお陰で暇になる事もなく、時間は過ぎていった。
しかし、手洗いに立ったルルーシュが戻ってきた時、その顔色の酷さにぎょっとした。どうしたのかと聞いても答えず、ただナナリーを抱き締めるとルーシウスの言う事をきちんと聞くように、と告げた。頷きながらも不安に涙目になるナナリーを離すと、今度はルーシウスに抱き付いて嗚咽を堪えた声で、母上とナナリーを頼む、とだけ洩らした。
「今から思えば、あいつはその時に決定的な何かを見聞きしたんだろう」
絶望に満ちたそれに混乱するルーシウス達を置いて、ルルーシュはすぐさま母のいるテーブルへと駆け寄った。そして彼女の為に今正に注がれたばかりの紅茶をせがんだのだ。
普段から自分の行動が母や妹を蔑む原因にならぬようにと律していた兄が、まさか他皇妃の前でそんな浅ましい真似をするなど、俄かには信じられなかった。マリアンヌも同じ思いだったのか、ぎょっとしはしたものの、どうにか息子を宥めようと言葉を紡ごうとした。皇妃達も彼を嘲笑った。そしてメイドに新たな紅茶をと指示をだそうとした。
だが、既に遅く。
子供らしいすばしこい動きで母のティーカップを手に取ると、ルルーシュはまだ熱も冷めぬそれを一気に飲み干してしまった。熱かったのだろう、痛みを堪える顔でごくりと喉を鳴らしたルルーシュに、誰もが言葉を失った。第三皇妃と第七皇妃が青い顔で立ち上がる。だが何を言えばいいのか解らぬ様子で、ルルーシュとマリアンヌを見比べるだけだった。
カップをテーブルに戻したルルーシュは、無礼を叱ろうとする母にぎこちない笑みを見せ、引き攣った声で小さく「母上、愛してます」と告げ、そのままそこにくずおれた。
「後はただ混乱の中だ。痙攣するルルーシュを母上が半狂乱になって呼ぶ声、悲鳴を上げる皇妃やメイド、飛び込んできた警備兵、俺はただ泣き出したナナリーを抱き締めて、促されるままに離宮に戻る事しか出来なかった」
その翌日、マリアンヌは帰ってきたがルルーシュは帰ってこなかった。処置が速かった為に辛うじて命は拾ったが、大人も簡単に殺せる量の毒を呷った為、未だ予断を許さぬ状態で意識も戻っていないのだと、目を真っ赤にしたマリアンヌに抱き締められた状態で聞いた。
調査の結果解ったのは砂糖壷に即効性の神経毒が混入されていた事。
それを頭から信じるほど、ルーシウスは愚かではなかった。あの時マリアンヌは砂糖など一さじも入れなかったのだ。そのタイミングも無くルルーシュが飲み干してしまったのだから。なのにそれを飲んだルルーシュは倒れた。
意味するところは一つしかない。
「毒は砂糖壷ではなく、母上の飲む紅茶に最初から入っていたんだ。…………母上を、殺す為に。あいつは母上を護る為に身代わりになった」
「……何でルルーシュ…お兄さんは毒の事を言わなかったんだろう? その場で問い詰めれば」
「そんな事をすれば母上の立場が危うくなる。事実は綺麗に隠蔽され、あらぬ嫌疑をかけたと追い立てられるのがオチだ」
マリアンヌもそれは解っていたのだろう。公式に出されたその触れに否定の言葉を発する事は許されず、ナナリーには告げぬ事、ルルーシュが目覚めるまで三人で耐え抜く事を約束し、その日は眠った。
しかし―――その一週間後、悲劇は再び彼らに舞い降りた。
『アリエスの悲劇』である。
「結局母上は亡くなり、ナナリーは目と足を病んで……俺はルルーシュとの約束も守れず、目覚めも待ってやれないまま、日本に来る事になってしまった…」
だから、せめて。
せめて名前だけでも共に連れてきたかった。それが相手を騙す事になったとしても構わない。自分達は何処までも一緒に在り続けるのだという、ルーシウスなりの意思表明だった。ナナリーもそれに賛同した。唯一人、母も自分達もいなくなった国に残してきてしまった兄を思い、たとえ伝えられない思いであっても、と。
「…………結果としてそれが、お前を騙す事になった……。…でも、決して悪気があった訳じゃない事だけは…信じて欲しい」
吐息のように囁いて、ルーシウスは言葉を途切れさせた。
スザクにはもう何も言えなかった。
2008-04-16 [Wed]
『ルルーシュが日本に…?』
『はい、彼は僕の家に預けられていた筈です! その、あの戦争で、亡くなってしまわれましたけど……』
『あぁ……そうね、確かにそうだったわ。でもスザク、それはルルーシュではないわ。ナナリーと共に日本へ向かったのは、ルーシウスよ』
『る、え?』
『ルーシウス。ルーシウス・ヴィ・ブリタニア。ルルーシュの双子の弟で、第十二皇子』
『双子…』
『一卵性の双子で、本当にそっくりだったわ。しかもそれを利用していつもクロヴィスお異母兄様に悪戯したり、私もよく騙されたりしたわ。彼らを見分けられたのはマリアンヌ様とナナリーだけだった…』
騎士に任命されてからここ暫く学校へ行けていなかった事もあり、スザクは常よりも速いスピードでアッシュフォード学園へと向かっていた。
頭の中にはユーフェミアとの会話がエンドレスで流れ続けている。
懐かしく目を細めていたユーフェミアは、言葉を無くしたスザクの様子に自分と彼の中の姿の違いを見たようだった。そしてそれが彼の根幹に関わるものであると察すると、直ぐ様スザクに学園へ行くよう命じた。連絡すべき事はもうない、後の手配は自分だけでも出来るので貴方は学校へ行ってください、と皇女の顔で。
ユーフェミアとしては、平穏な日常を愛する自分の騎士の心の安寧を促す一言のつもりだったのだろう。だが、結果的に学園にあるルルーシュを連想させる言葉に、スザクの心は凍りついた。
暇の言葉も漫ろに、一も二も無く走り出した自分の情けなさを、スザクは呪えない。スザクの中でルルーシュという存在は一般的な好悪の外にあり、最早切り離す事の難しい、己の心の中核の一部であるからだ。七年前の『あの夜』から絶えず求め続けていた光。七年の孤独を経て寄り添う事を許された、忌まわしく愛おしい記憶の象徴である『彼』。それが僅かにも揺るがされた事に、スザクはとてつもない恐怖を覚えた。今は一刻も早く彼の傍に行きたい、彼の声を聞きたい。こんな時は携帯を持てない身分を恨めしく思う。実際にはユーフェミアの騎士就任と共に手配はされているのだが、どこでどう『手間取っている』のやら未だ手元にこない。自分の代わりに怒ったセシルに仕方ないと笑った自分を殴ってやりたい位だった。
兎に角走り続けるしかなく、スザクは切れた息を飲み込んだ。
クラブハウスに駆け込んだスザクの目に飛び込んだのはホールの回廊でぼんやりと窓の外を見つめるルルーシュの背中だった。寂寥と諦観の漂う後姿は酷く儚げで、過酷な運動を続ける羽目になっていた心臓が全く別の意味で波打ったのを感じる。
「……スザク、か」
僅かに首を傾けた肩越しに見える瞳は、月明かりに透けて常よりも濃く青く潤んで、上った血をじわりじわりと心臓へ、足へと落とし込む。停まった事で噴き出した汗も疲労を訴え震える膝も、全てが凶兆に思えて堪らなくなり、スザクは思わず口を開いた。
が。
「る、」
『ルーシウスよ』
『ルーシウス。ルーシウス・ヴィ・ブリタニア。ルルーシュの双子の弟で、第十二皇子』
甘やかなユーフェミアの声がスザクの喉を塞いだ。
彼を何と呼べばいい?
ルルーシュ?
それとも、ルーシウス?
引き攣り、続ける事の出来ない言葉に何を見たか(恐らく全てを。彼は恐ろしい程全てを見通すのだ)、ゆっくりと振り返ったルルーシュ(あぁ、違うかも知れない、でもどう呼べば)は気を許した相手にだけ向ける慈しみに満ちた笑みを浮かべてスザクを見下ろした。
「……部屋に。ここは声が響くし、誰が来るとも知れないからな」
そう言ってきびすを返した背中はもう普段の彼で、だからこそそこにある喪失の前兆を思い知らされる。
扉の向こうへ消えた背を追う事も出来ず、しかしこのまま寮へ戻る事も侭ならず、スザクは震える身体を押さえ込む事が出来なかった。
***
ナナリーはもう休んでいる時間である為、クラブハウスは静かだった。
ぎこちなくルルーシュの部屋に入ると、言葉を発する前にローテーブルを指差される。何時もならチェスボードや読みかけの本が乗っているそこには、スポーツドリンクのペットボトルとコップ、タオルが置いてあった。
視線を戻せば呆れた様な笑みでルルーシュが笑った。
「取り敢えず、それを飲んで先ずはシャワーを浴びろ。ずっと走ってきたんだろう? 汗臭いぞ」
「……で、も」
「俺は逃げない。だから今は言う事を聞け」
気負いも無く目の前に立ち、テーブルから取り上げたタオルを胸に押し付ける。仕草も何もかもが変わらないのに、目の前の姿をどうしてもはっきりと見る事が出来ない。恐らくシャワーを浴びる間に少し冷静になれという事なのだろう。
今のスザクでは話を聞いたところでまともに考える事も出来ないだろうから、この提案はスザクにとっても助けになった。
「……ミレイか。スザクが来た。……あぁ、俺ももう少し手間取ると思っていたんだが、あの様子では、気も漫ろで役に立たないから追い出されたんだろう。此方である程度の説明はするから、お前は俺達のデータと事後処理を頼む。あと、済まないがルーベンには明日時間を空けてくれるように伝えてくれ……あぁ………あぁ、じゃあ、また」
それでも急く気持ちに耐え切れず烏の行水で飛び出すと、既に着替えたルルーシュに今度は本当に呆れられた。
「…こっちに来い。髪がまだ濡れてる」
「え、あ、」
「座れ……普段は偉そうにあれこれ言う癖に、こんな時は手を焼かせる辺りは全く変わらないな」
腕を引かれてソファーに腰を落としたスザクの髪を拭っていく。受け入れられている。護られていると思わせる柔らかさで髪を、頭を、項を撫でる手に、知らず溜息を漏らした。途端背後から小さな苦笑が聞こえる。
「溜息尽きたいのは俺だ。幾らなんでも素直すぎるぞ、少しは堪え性がついたと思ったんだがな」
「……だって………」
「…まあ、それについては俺にも責任があるんだろうが…本当に……」
それきりルルーシュが沈黙し、部屋にはわしわしと髪を拭う音だけが響く。そうなると徐々にスザクの中にも冷静さが戻ってきて、自分の混乱具合を思い出して少し恥ずかしくもなった。それほどに、ルルーシュの手は変わらなかったのだ。
当然だ。彼の名が別のものであっても、彼自身が変わる訳ではないのだから。
丁寧に髪を梳られ、ふわふわとタオルで頭を包まれながら、スザクは静かに問いかけた。
「ねえ……君の名前は、本当はルルーシュじゃないの…?」
手が止まった。一拍置いて、何事も無かったように再び動き出した手に視界が滲むのを感じながら、スザクは尚も問う。
「……七年前、君は父さんにも、僕にも、ルルーシュって名乗ったよね…?」
「……ああ」
「…でも、僕、今日聞いたんだ……ユフィ…ユーフェミア殿下に…七年前、日本に来たのは、ルルーシュじゃないって。ルルーシュじゃ、なくて、」
膝の上、握った手にぼたりと雫が落ちた。喉が引き攣る。
優しい手も、ぶっきらぼうに言いながらもこちらを気遣う性格も変わらない。それは理解したのに、名前が違うというたった一つの事にここまで動揺している自分が恨めしくなった。彼の事だから絶対に理由がある、頭では解っても心が付いていかない。十七になっても、彼に関わる事に関しては、情緒が七年前で留まっているのではないだろうか。
ぐすぐすと鼻を啜りはじめたスザクをどう思ったのか、髪を撫でる手は止まり、気配が背後を回って隣に着いた。そのまま隣に腰を下ろすと、彼は小さく息をつく。どう説明すればいいのかを考えているというより、言葉にする事におびえているようにも感じて、タオルの端から見える彼の手を咄嗟に握った。突然の接触に手はびくりと揺れたが、やがて指を絡めるように繋ぎなおされ、握り返される。
そのまましばしの沈黙。
握り合った手から、恐怖に揺れる不安定な鼓動が伝わるようで、ただ静かに言葉を待つ。
やがて決心がついたのか、ルルーシュはぽつりともらした。
「…………俺の名前は、ルルーシュじゃない。本当は、ルーシウスという」
「…」
「ルーシウス・ヴィ・ブリタニア。それが俺が生来持つ名前だ」
じわりと痛んだ胸に刺激されてか、再びスザクの目から涙がこぼれる。騙されたという思いなのだろうか、それとも他の何かなのだろうか。解らないまま懸命に嗚咽を抑え、ルルーシュの、否、ルーシウスの言葉を待つ。
「……何故、その名を名乗らなかったのか、疑問か」
「……」
頷くスザクに、当たり前だなと苦笑を洩らし、ルーシウスは繋いだ手に空いた手をも重ねた。
「俺が、ルルーシュの名を名乗ったのはな、共に在りたかったからだ。言葉も思いも届ける事が出来なくても……心だけは寄り添いたい、寄り添い続けているんだと願ったから、俺はルルーシュと名乗った……ただ一人、味方もいない場所に残してきてしまった兄の名を…な」
HN:
イタクラ
性別:
非公開
自己紹介:
ルル至上、ルル受。
お陰でそれ以外に対して厳しいことが多いですが、基本的に皆大好きです。スザルル萌ですが、黒騎士ロイドも好物だったりします。
捏造・パラレルネタ、エロよりもグロとか暴言が多いと思われますのでご注意を。
お陰でそれ以外に対して厳しいことが多いですが、基本的に皆大好きです。スザルル萌ですが、黒騎士ロイドも好物だったりします。
捏造・パラレルネタ、エロよりもグロとか暴言が多いと思われますのでご注意を。