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嘘つきパラドクス
「ルルーシュ・ランペルージは嘘吐きである」とルルーシュ・ランペルージは言った。さて嘘か真か?
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2008-08-25 [Mon]
挿絵m(ry



 エアロックが鋭い音を立てて開き、中から数人の人影が滑り出した。
 補佐官かと一瞬身構えたものの、出てきたのは黒い軍服に揃いの帽子とバイザーを着用した軍人だった。SPか親衛隊か、数名はそう長くもないタラップに一定の距離を置いて立ち、残りはスザクたちの元までの花道を両脇から警護するように並び立った。
 駐留の兵士と一角を迅速な動きに感嘆を抱く間に、タラップの上には新たな影が二人分、姿を現していた。
 片方は出てきた者たちと同じ黒の軍服に身を包んだ青年、まだ新兵なのか、動きが硬くぎこちない。ではもう片方がと視線をずらし、スザクは知らず目を瞠っていた。
 白を基調とした皇族服は金糸銀糸で細やかな刺繍が縫いこまれながらもシンプルで上品な物。マントは上位皇族がよくまとう鳥の羽根を模したものだが色は襟からすそにかけて純白から菫色の淡いグラデーションで彩られており、細身の身体にそって緩く合わせられているせいか、コーネリア達の様な羽ばたくイメージよりもそっと水辺にたたずむ白鷺のような静かなイメージを与えるものだった。手は絹の手袋に包まれて、右手は共に立つ青年へ、左手は金細工で装飾された紫檀の杖を握っている。全てが白系で統一されているように見える中、ゆっくりと上げられたのは黒絹にも似た艶やかな髪。白い面には細身の眼鏡が乗っており、深い紫の瞳が居並ぶ兵士とスザク達を捕らえた。
 薄い唇が、柔らかな弧を描いた。僅かに傾けられた首。
 その笑みはまるで――――。

「ルルーシュ!!」

 隣から上がった声に肩が跳ねた。スザクの様子に気を向ける事無く、一歩踏み出したユーフェミアが嬉しそうに胸で手を組んだ。それににこりと笑みを返し、ルルーシュと呼ばれた少年――いや、彼こそがルルーシュなのだが――は左手の杖を介助していた兵士に手渡すと、手すりに触れながら一歩一歩階段を降り始めた。途中タラップに並んだ兵士達が手を差し伸べ、細心の注意を払いながら彼が降りるのを手助けする。
「そういえばルルーシュ殿下は右足がお悪いんでしたね」
「正確には、右半身麻痺だよ。まあ使われたモノと量を考えれば、あぁやってるのが奇跡らしいけどねぇ」
 ぼそぼそと背後で囁きあう上司二人の言葉が嫌に耳に残る。その話は予め聞いてはいたものの、やはり当人達以外から聞くのはどこか後ろめたく感じてしまう。
 健常者よりも時間をかけて降りきったルルーシュは、再び杖を受け取ると右手を兵士に預け思うよりもしっかりとした足取りでユーフェミアの前まで進み来た。そしてそのまま僅かに頭を垂れる。
「久方ぶりで御座います、ユーフェミア皇女殿下」
「ええ、久しぶり! この度は私の至らなさからこのような所まで呼び出す羽目になってしまい、本当にごめんなさい」
「どうかお気になさらず。飽くまで提案であったものを、自らお受けになる決断力とその向上心を思えば、お手伝い出来る事に名誉を覚えこそすれ謝罪される事など何もございません」
「…………」
「…………」
 不意に二人がそろって口を閉ざす。
 二呼吸ほどの間が開き、周囲が首を傾げ出した時、ユーフェミアが噴出した。体を起こしたルルーシュに体当たりするように抱きつき、揺らいだその体を周囲の騎士達があわてて支えた。
「ルルーシュ! ルルーシュ久しぶり!!」
「本当に久しぶりだね、ユフィ! すっかりレディになったと思ったのに、全然変わってないな、君は。庭で走り回っていたおてんばのままだ」
「まあ失礼ね! これでも副総督なのよ?」
「なら口上を終わらせる前に飛びついたりしないでくれ、副総督なんだろう?」
 わざとしかめ面してみせ、支えてくれた騎士たちに礼を言って改めて立ち直したルルーシュに機嫌よくひらりとドレスを翻すと、ユーフェミアは改めて笑顔となった。
「では改めて、エリア11へようこそ、ルルーシュ! 歓迎するわ!!」
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