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嘘つきパラドクス
「ルルーシュ・ランペルージは嘘吐きである」とルルーシュ・ランペルージは言った。さて嘘か真か?
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2024-11-22 [Fri]
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2008-06-08 [Sun]






 目的の人物は既に飛行場へ向かってしまっただろうか。
 足早に、というよりも既に小走りに進む青年を、周囲の官僚が忌々しげに睨んだ。だが青年の方もそんなものに気を取られている場合ではないので完全に無視している。元々彼らはいい目で見られる事がないから、そんな視線も今更のものなのだ。
 何より青年を走らせる原因は、こちらの予定も何も考えずに全てを押し付けてきた官僚達にこそあるのだから、逆恨みとしか言い様がないと胸中だけで嘆息する。
 やがて見通す先、宰相閣下の執務室から礼を取って出てくる人影が目に入った。青年と同じ黒の軍服に剣と翼の意匠、柔らかく奔放に跳ねる鳶色の髪は彼を随分と幼く見せている。健康的に焼けた肌は彼がブリタニア人ではないと伝えていたが、青年にそれを忌避する感情は無い。軍服を飾る徽章と襟章、何より左胸に輝く銀の騎士章が彼の立場を青年や周囲の官僚どもよりも高くに押し上げている。そしてそれは彼自身がそれこそ血を吐くような努力をしたからこそ持ち得たものなのだ。
「准将!!」
 背後から近付く足音に気づいたか、彼もまた足を止め静かに振り返った。
 千歳緑の瞳がとがめるように細められたのを見て青年は騒々しく走った事を小さく謝罪すると、手に持ったファイルを此方に向けて差し出した。
「エリア11の最新状況です」
「ご苦労。―――落ち着いているようだな」
「はい、ユーフェミア皇女殿下の騎士就任式以来、主だったテロリスト達は沈黙を保っているようです。小規模の騒ぎはあれど、すぐ鎮圧されています。ただ、どうやら中華連邦の方に動きが見られるようですが」
「そちらはいい。国家間の問題に我等が関与する理由はない。我等が任務はルルーシュ殿下の御政務の補佐と御身の安寧を護る事、それのみ。我らの敵は『ルルーシュ殿下を狙うもの全て』だ。連中が殿下に刃を向けるならまだしも、エリア11の防備に我等が首を突っ込む必要は無い」
「はっ!! 准将はこのまま先行されるのですか?」
「いや、一度殿下に拝謁してから行く。私がいない間の御手引き役に手ほどきをせねばならないしな」
 無表情だった彼の口角が僅かに上がったのを見て、青年も小さく噴出した。
 殿下の御手引きは彼だけの役という訳では無かったが、重要な舞台では必ず彼がその役を務めていた。しかし今回託されるのは入隊したばかりの新人だ。身に余る栄誉による緊張と重責でがちがちになっていた様子を思えば、出発時間がずれ込むのは間違いない。随分と皆から『殿下の御身の安全が最優先だ』と言われていたようだから、きっと行き過ぎた警戒になる。とは言え、恐らく彼はそれを求めたからこそ、今回のこの指名となったのだろう。
 笑いを漸う引き込めて、青年は受け取りなおしたファイルを小脇に改めて礼を取った。
「では、私はこれで失礼いたします。道中ご無事で、グランブリュ准将!」
「あぁ、後の事、殿下の事、しっかり頼む」
 返礼してきびすを返す、その目は既に遠くに向けられていた。凛々しく、雄雄しいその後姿に青年は礼を崩さない。
 彼の名はトゥーダ・K・V・グランブリュ。第十一皇子ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの専任騎士であり、枢木スザクに二年先んじて、史上初の騎士となった名誉ブリタニア人である。
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