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2008-09-30 [Tue]
25話、ルルーシュ死亡後。
このくらいはしてくれると信じてる。
このくらいはしてくれると信じてる。
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ゼロを呼ぶ歓喜に満ちた声を、ルルーシュを罵る憎悪に満ちた声を、沢山の手で解放されながらカレンは聞いていた。
助かって良かった。
これで自由だ。
ゼロ万歳!!
悪逆皇帝は滅んだ、ゼロが解放してくれた!!
ゼロはやっぱり正しかったのだ!!
思い知れルルーシュ、世紀の極悪人!!
ゼロこそが世界を救った!!
(――――違う、違う違う違う違う違う、違うの!!)
叫びたかった。
彼こそが世界を救ったのだ。割れた世界を一つにまとめ、全ての憎しみを受け取って散る事で、人々の願いを叶えたのだ。
ルルーシュこそが―――ゼロこそが!!
だが、それを言葉にする事は許されない。
人々の賛美を受ける『ゼロ』は血を払った刃をしまいもせず、常なら既に何か言葉を発しているだろうに、何も言わずに段下の人々―――骸となった兄に縋り泣き叫ぶ少女を見つめていた。
自分が知るよりも幾分がっしりとした体。重たげなマントを物ともせず軽々と走り抜けた脚。重たげな大剣を振るう腕。
ゼロを知る者が知らない、『ゼロ』。
それが意味する事に、そしてこの状況があらわす全てに、隣に呆然と立つ藤堂は気づいたのだろう。人にもみくちゃにされないよう天子を抱き上げた星刻もまた。愕然と人々にもまれる扇も。ただ一人神楽耶だけが涙を、嗚咽を洩らしながら、髪が地面をこするほどに深く頭を下げていた。
ゼロ!!
ゼロ!!
ゼロ!!
ゼロ!!
人々の声が響き渡る。
なのに、それを切り裂く悲鳴にも似た少女の泣き声はかき消されない。歓喜に満ちる世界の中、ただ一つ深い絶望に溢れたその声。
耳を塞ぎたかった。
少女がどれほど兄を慕っていたか、カレンは誰よりも知っている。兄が少女をどれだけ愛していたかも。だからこそ、塞いではいけなかった。見つめるのをやめてはならなかった。
やがて何処からか石が飛来した。
それは少女にも骸にも当たりはしなかったが、人々の中に明確な意思を生み出した。
二つ、三つ。
世も末と泣き叫ぶ少女と、誰にも理解されなかった英雄の身体に向けて、冷たい石が投じられる。
吊るせ!!
悪逆皇帝を吊るせ!!
首を切って晒してやれ!!
殴らせろ!!
歓喜から一転、悪意に満ちた声に、それを実行しようと走り出した群集に、藤堂が飛び出しかけるのを腕を掴んで止める。
群集の邪魔をしてはならない。それは『彼ら』の起こした奇跡を踏みにじる好意だ。『彼ら』の決意の、行動の、その最悪にして最上の結果を邪魔してはいけない。
思いを篭めて腕を握る。振り返った藤堂がはっと息を呑み、耐えるように小さく謝罪を呟いた。
人々が御料車へよじ登る。
誰かが骸を蹴りつけた事で周囲に気づいたらしい少女が骸を深く深く抱きこみ、怒りに満ちた拳が、蹴りが、少女をも襲おうと振り上げられた、その時。
「静まれ!!!」
御料車の上から沈黙でもって全てを見ていた『ゼロ』が声を上げた。
鋭い怒りを孕んだ声に、人々の動きが止まった。静まり返ったパレード会場に、少女の、そして誰かの嗚咽が小さくこだまする。
人々の注目が十分に集まった事を知ったのだろう。『ゼロ』が声を発した。
「悪逆皇帝ルルーシュは死んだ。私が殺した」
低く、語る声。変声機ごしの、だが間違いなく違う声。
「数多の悲しみを、怒りを、絶望を生んだ皇帝は今ここに墜ちた。
恐怖で彩られたこの二月の間、君達がどれほど嘆き悲しんだか、私もよく理解している。拳でもって、或いは刃でもってその遺骸を貶めたいと望むほどに怒りを抱いている事も。
それでいい。
君達はもう自由なのだから。
言葉を押さえつけられる事も無く、天上から降る恐怖におびえる事もない、本当の自由だ。最も尊い意思を押さえつけられ続けた怒りをぶつける事は間違いではない」
わあ、と歓声が上がりかけ、しかし押えるように上げられた左手に再び沈黙がおりた。
「だが、その前に君達に問おう。君達はこの光景を知っているはずだ」
どよめきが湧き上がる。戸惑う人々の視線を誘導するように、未だ血の滴る大剣がゆっくりと持ち上がり、段下を示した。
そこにいるのは。
「…ぃ、様……おにいさま…嫌です、嫌…」
か細い泣き声。
ただ一人その遺骸を護ろうと掻き抱く細い腕。
ぐたりと投げ出された体が、儚い少女の拘束に抗う事はない。
身を切るような懇願に、答える事は、ない。
そこにいるのは、たった一人の兄を亡くした絶望に泣く、少女だった。
群集のどよめきが広がる。
あちこちで戸惑いと怒りの声が零れ始めるのを、『ゼロ』は黙って見ていた。
ただ、見ていた。
それに気づいた群集は徐々に言葉を潜め、次々と『ゼロ』を見上げ始める。まるでそこに正しい答えが、導きがあると言わんばかりに。
「諸君。私は優しい世界を望んでいる」
優しい声だった。
「だからこそ、私は起った。だからこそ、合衆国を望んだ。他人を傷つける事のない優しい国を」
静かな声だった。
「改めて、私は君達に問おう。この光景を、君達は知っているはずだ」
カレンは知っていた。
藤堂も、扇も、神楽耶も、そして群集も。
あれは自分だ。
大事なものを奪われて嘆く、過去の自分だ。
あれほど膨れ上がっていた怒りが静まっていく。消えることなく燻ってはいるものの、今この時、少女に向けることを躊躇う程度には。
静かに大剣が掲げられる。
鋭く、血塗れた刃に群集がかすかに息を呑んだ。
「……諸君、私は全ての嘆きと怒りの代替としてこの刃を振るった。
優しい世界を求めながら刃でもってしか終わらせる事が出来なかった事を私は嘆かわしいと思う。語り合うことでなく、同等の暴虐でもってしか終わらせる事が出来なかった。
だからこそ私は君達に初めて請おう―――許しを。
彼女の兄を安らかに眠らせる事を、許して欲しい。
彼の墓標を我らが築く事はないだろう。それだけの行いをしたのだから。
だが、我らにとっては憎しみ絶えぬ悪逆非道の卑劣漢であっても、彼女にとってはただ一人の兄だった。世界の安寧と引き換えに、彼女は唯一の兄を亡くした。しかも目の前でその命を奪われた。此れほどの悲劇があるだろうか?
これ以上の嘆きを私は欲しない。世界は既に救われた。ならば、彼女の悲しみでもって、全ての負の連鎖を終わらせなければならない。既に救われたものを引き合いに、悲しみを石打つような事は絶対にしてはならない!!
この嘆きの声を最後の嘆きとして、世界は生まれ変わるのだ!!」
弾ける様な歓声が沸いた。
再び人々が『彼』の名を呼ぶ。
ゼロ!!
ゼロ!!
ゼロ!!
ゼロ!!
ゼロ!!
集う群衆の間、数人が意志を持ってゼロを見上げた。
答えるように『彼』は頷く。
嘆く少女を、同じく悲劇の中で妹を喪った異母姉がそっと抱いた。
何時の間にそこに立ったのか、異形の仮面をつけた男が物言わぬ骸に跪く。
異母姉とその騎士によって優しく骸から遠ざけられた少女が、兄から引き離される恐怖に更なる悲鳴を上げ、しかし仮面の男の何某かの囁きに、縋らんとした両手を落として俯いた。
騎士によって少女の拘束が解かれたのを確認すると、仮面の男は恭しい手つきで遺骸を抱き上げ歩き出す。
『ゼロ』は止めなかった。
最早群集の誰も皇帝の遺骸に目を向けなかった。
ゼロ!!
ゼロ!!
ゼロ!!
ゼロ!!
ゼロ!!
まっすぐに向かってくる仮面の男を前に、カレンは動けない。
男は神楽耶の前で立ち止まった。
咄嗟に扇と南が庇うように走るが、二人を押しのけて前に立ち、神楽耶はひたと皇帝の死に顔を見つめる。
「『約束どおり日本をお返しする。今まで本当にありがとう』」
漏れた囁きにぎょっと一同仮面の男を見れば、
「我が主の伝言、確かにお伝えした」
それだけを言い残し、男は再び歩き始めた。
愕然と立ち尽くす扇にヴィレッタが寄り添うが、彼女自身も戸惑いを隠せないようだった。神楽耶は最早立っている事が出来ず、崩れ落ち涙を零す。友の嘆きに天子が同じく瞳を潤ませ、藤堂と星刻はそれぞれの敬礼でもって彼らの背を見送っている。
「…これが、あの二人が求めた答え」
隣に並んだジノの声に、落とすまいと耐え続けていた涙が落ちた。
嘆く資格など、それこそ自分にあるものか。そう思い唇を噛み締めるも、一度噴出した悲しみは止まらない。次々と溢れる涙に、嗚咽に、カレンはせめて彼に見せまいと両手で顔を覆った。
少女の嘆きを捧げられ、世界はようやく争いをやめた。
2008-09-22 [Mon]
クロスオーバーにも程があるクロスオーバーネタ。
いや、ギアスの日本を見たらきっと悲しいだろうし、取り戻すために頑張るんだろうなって。
いや、ギアスの日本を見たらきっと悲しいだろうし、取り戻すために頑張るんだろうなって。
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。貴様らは――…っ!?」
左目に宿ったばかりの赤い鳥を羽ばたかせる為、上げた手を振り抜こうとした瞬間、目の前に突如として大木が現れた。
凄まじい音を立てて屹立したそれにルルーシュは思わず言葉を途切れさせるが、遮られた先から響く悲鳴に更に目を剥いた。銃声も聞こえるが、大木に阻まれ此方には届かない。その代わりの様に、悲鳴に被って大型の獣の唸り声がするのだ。
おかしい。
ゲットーがいくら荒れているとは言え、さっきまでこの近辺は完全な戦闘区域だった。人は愚か根城を持っていただろう野良犬の類は早々に逃げ出している筈だ。
というか、先ず目の前に生い茂るこの木は何処から生えた?
下を見れば荒れ放題だがしっかりと舗装されたコンクリートの地面と倒れる女(ただし死んでいる)。上を見ればあちこち割れたトタン屋根とそれを支える鉄骨。明らかにこんな大木が一瞬で生えるような下地は無い。
だが、まるでそれが当然の事であるかのように、大木はコンクリートを割って生えている。
一体何がどうしてこんな事に?
そんな場合ではないと重々承知している筈なのだが、突発事項に弱いルルーシュの頭が目の前の異常事態についていける訳がない。
思わず、この事態を説明可能な理由を脳味噌フル回転ではじき出そうとした時、今度は大木が横一線、すぱんと切り払われた。
そして。
『ワンッ!!』
「ほわああっ!?」
倒れてくるはずの大木は花と消え、場違いにも美しく舞い散るその向こうから凄い勢いで白い塊が飛び掛ってきた。ぎょっとするルルーシュ(自他共に認める運動神経無し子)がそれを避けられる筈もなく。
豪快に背後の階段を転がり落ちた。
***
ゆらゆらと揺れる体。
鼻腔をくすぐる清楚な花の香気。
とくとくと、自分と重なる柔らかで確かな鼓動。
僅かに引きずるつま先が熱い。
薄ぼんやりと浮上した意識で、どうやら自分がふかふかとした物に凭れ掛かっている事に気づいた。
暫しの間、呆とそれを感じていたが、スイッチが入り直したように明確な意識が戻り、ルルーシュは飛び起き。
途端、不安定な身体が瓦礫の上に転がった。
「…ほあ!?」
『ワウッ!?』
ごろん、ごつっ、と、転がって瓦礫で頭を打つというレトロなコメディばりの事をやってのけ(別にやりたい訳でも無かったが)、頭を押えて蹲るルルーシュの周りをてふてふと忙しない足音がうろついて回った。
涙の滲む目を僅かに上げてみれば、見えるのは白い脚。
「…………は?」
『ワウ?』
思わず漏れた間抜けな声に、更に間抜けな鳴き声が被る。
地面に這いつくばったままゆっくりと視線を上げる、その先にいたのは、純白の犬――否、狼か。
なんとも間抜けな姿ではあったものの、これが、日の本に宿る優しい神様と孤独な皇子の出会いだった。
2008-09-05 [Fri]
またしてもにょたるるネタ。でもこっちは普通にスザルル、のはず←
凄く短い上にテンションがおかしいので注意。
多分じりじりと追加されます。
凄く短い上にテンションがおかしいので注意。
多分じりじりと追加されます。
「初めまして僕の名前は枢木スザク一身上の都合により中途入学の形になりました七月十日生まれのかに座趣味は身体を動かす事得意科目は体育と日本史苦手科目は数学と物理その他計算系一応剣道と合気道空手の段位持ち見た目こんなだけど純日本人ですよろしくところで会ったばっかりなのに突然で本当にすまないんだけど運命を感じました僕と結婚を前提にお付き合いしてくださいお願いしますっ!!」
まるでどんぶり飯をかきこむ様に勢い込んで叫んだと思ったら、くるくるの茶髪が勢い良く振り下ろされた。恐らく額が机に激突しただろう痛快な音が響き、教室は静まり返った。
戸惑うルルーシュをよそに、くるくる頭は動かない。
と。
何か赤いものが机の上に染み出して。
「……………、ほああああああああああああ!!??!?」
「えっ何どうしたの」
「ルルーシュ、ってぎゃああああああああ!!!!!??」
「ちょ、うわあああああ血ぃ出てるって血いぃいいいぃ!!!!」
「血? って机の上、これどうしたのもしかして何処か怪我してたの!!!?」
「けけけけけ怪我をしてるのは貴様だあああああっ!!」
「えっ、僕怪我なんて……あれ、なんだかくらくらする」
「ばばば馬鹿止血っ傷口圧迫しなきゃ!!」
「ああ誰か知らないけどありがとう……でもこれ普通ヘッドロックって言わないかな……あれ、母さん? 幼稚園の頃に死んだ筈だよね、母さんどうしたの、なんでそんなににこやかに手招きしてるの……」
「やばい正気に戻れそっちは彼岸だ―――!!!!」
「だっ誰か、誰かラクシャータ先生呼んできてええええええ!!!!!」
そんな風に、ルルーシュ・ランペルージ、新学期一日目の爽やかで希望に溢れた朝は、流血の惨事に彩られた。
***
圧迫止血でどうにか血は止まり、虚ろな昇天顔から一転照れ笑いを浮かべるスザクの額に包帯を巻きながら、リヴァル・カルデモンドは深ぁいため息をついた。
「いやー、今までいろんなパターンで告白する奴を見てきたけどさあ…、まさかあんな方法で気を引こうとする奴は初めてだったぜ…」
「別に怪我をしたくてやった訳じゃないんだけどね」
「いや、そんな格好で言われても」
爽やかに笑みを浮かべる新しい級友は、だが黒い制服の前身ごろをじっとりと更なるどす黒さが異常性を際立たせている。拭ったとはいえ首元にもまだ赤黒い跡がある為、ぶっちゃけ怖い。
「まあ…お前にどんな意図があってこうなったかは、後で本人その他にきちんと話してもらうとしても…」
ぱちり、と包帯の端を留め、首を傾げるスザクをつかんで椅子ごとくるりと180度回転させた。
途端に突き刺さる複数の針の視線に、思わずスザクが、ついでとばかりに同じ視線にさらされたリヴァルが首をすくめる。
「……相手を失神させるのはどうかと思うぜ、俺は」
「えーと…そんなつもりはなかったんだけど…」
二人が視線を向ける先のベッドには、保険医によって脈を取られながら目を回してベッドに横たわるルルーシュ・ランペルージの姿と、その周囲に集まった級友と弟妹。その誰もが鋭く眦をあげているのは、まあ、状況からして仕方ないとしても。
「………あのー、会長もナナちゃんもロロも、ついでにカレンとシャーリーとニーナも、……授業は?」
「だってお姉さまがお倒れになられたって聞いていてもたってもいられなくて、朝あんなにお元気だったし、私とロロの事も優しく見送ってくださったばかりだったのに…!!」
「姉さんが倒れたっていうのにじっとしていられる訳ないじゃないですか!! 今日は兄さんもいないし、男手は僕だけなんだから、僕が護らなきゃって思ってたのに…!!」
「何言ってるのリヴァルっ!! 我がアッシュフォード学園高等部が誇る生徒会副会長のルルちゃんが朝から惨劇に見舞われて生死不明って大騒ぎになったのに、このミレイさんが問題を放置する訳ないでしょう!!」
「信じられない!! ルルが倒れちゃったのに心配しない訳ないじゃない!!」
「あの血の池横目に授業なんて受けてられる訳ないでしょう!? あたし隣の席なのよ!?」
一斉に叫んだ一同からわずかにずれて、より具体的な事はニーナがおずおずと伝えてくれた。
「き、教室の血のにおいが消えるまで、今日は自習って話になってるから…」
「そ、それは…」
「ごめんなさい…」
何故か一緒に平謝りするリヴァルだが、はたと自分の立ち位置を思い出し、そそくさとニーナの隣へ移動した。
2008-08-12 [Tue]
明らかにネタです。
とはいえ、素晴らしく秀逸なコラボを描いておられるサイトさんもあるので結局は書き手の手腕なのだろうと思われますが(自虐極まる発言)、取り敢えず萌えが直走ったので自分の妄想にGOサインを出しました。
勢いだけですが適当にどうぞ。
↓年表を参考とさせていただきました。
ナラカ様
とはいえ、素晴らしく秀逸なコラボを描いておられるサイトさんもあるので結局は書き手の手腕なのだろうと思われますが(自虐極まる発言)、取り敢えず萌えが直走ったので自分の妄想にGOサインを出しました。
勢いだけですが適当にどうぞ。
↓年表を参考とさせていただきました。
ナラカ様
TOA世界はあのままです。預言に支配されたやる気の無い世界。
ルルーシュはマルクト王国の若き文官。目と脚の不自由な妹と共に首都グランコクマに住み、20歳の若さでありながら、皇帝陛下の有能な秘書官として名を馳せています。一応爵位を与えられてます。宮中伯。家名はランペルージを名乗り、対外的にはケテルブルグ出身となっていますが、実はバチカル出身で王族の一応傍系にあたります。先々先代の王弟の血筋、みたいな。更に母の姉がインゴベルト王の王妃として召し上げられ、それなりの発言権も持った家でした。しかし王妃は出産後儚くなり、その娘も金髪で王家の特徴なんて全く持ってない事からあらぬ不義疑惑を掛けられてしまい、社交界ではちょっと村八分食らってました。
なのでバチカルに対する未練は全く無し。一家揃って王家の特徴なんて全く出なかったので、母の死を切っ掛けにこれ幸いと身分も全て捨てて(更にあれこれ手を回して証拠を消したり捏造した上で)マルクトに亡命しちゃいました。
亡命理由は至って単純、キムラスカは預言遵守派だったから。
幼い頃から聡明だったルルーシュは元々預言に懐疑的だったのですが、それを致命的なものにしたのがホド戦争と母親の死でした。
ホドには母の縁故だったアッシュフォードや、母の友人だったユージェニー・セシルが嫁いだガルディオス家があり、さらにガルディオスの縁で知り合った幼い友人であるスザクが住んでいました。しかし戦争でホドは消失し、アッシュフォードと枢木家はどうにか難を逃れられたもののユージェニーもガルディオス家の家人達も亡くなってしまいました。
キムラスカ・マルクト双方に凄まじい被害を出したホド崩落は、そこで終わると思いきや導師エベノスの介入があるまで続けられました。
ルル的には不可解ですが子供の疑問など大人が相手にしてくれる訳もなく、無邪気に問い続けられる程空気を読む事に疎くもなかったルルは、辛うじて生き残ったスザクや、ミレイたちと鳩のやり取りをしつつ悶々とした時を過ごします。
しかしそれが続いたのも9歳まで。伯母の命日が近いとの事で城に呼び出され、謁見を終えて帰ろうとした一家を凶弾が襲ったのです。その際妹ナナリーを庇い母は死亡、ナナリーは辛うじて存命するも、怪我が元で脚が、そして母の死を目の当たりにした精神的ショックで目が不自由になってしまいました。
悲嘆にくれるルルーシュに、預言士は告げました。「悲しむ必要はありません。これは預言に読まれていた事で、この悲劇を経て人は繁栄へと向かうのだから――」と。
当然ルルーシュは激怒します。預言の為に殺された母。預言のせいで美しいものを見る事も、外を駆ける事も出来なくなった妹。
インゴベルトに訴えても「それが預言に読まれていたのなら仕方ない」と馬鹿げた返答しか返らず、怒りを抑えながら探りを入れてみれば、一家を襲った者達も実は預言遵守の為の行動として殆ど罪らしき罪も問われていなかったのです。更に調べていけば、友人や家族にも等しい人たちが故郷を無くしたホド戦争ですら預言に詠まれていたという事実に行き当たってしまいました。
こんな馬鹿な事が罷り通っていいものか、もしこの先更なる悲劇が詠まれたとしても、それすら容認されるというのか。
悲憤の中、ルルーシュは妹を連れてマルクトへ亡命する事を決意します。ただしマルクトの当時の皇帝はキムラスカと同じく預言遵守派なので、取り敢えず自分達も死んだ事にして暫くマルクトの辺境にでも逃げ込んで、次期皇帝の態度を見てからそっちに付くか否かを決めようと考えました。
グランコクマで暮らすスザクたちにもその旨を鳩で伝えると、スザクはアッシュフォードを通じてスーパーメイド沙世子さんを派遣。何処か探してるならケテルブルクにしない? 俺もいくよ! アッシュフォードも協力してくれるしさとあっさり。お気楽な言葉ではありますが、それでも信頼の置けるスザクの言と沙世子さんの素晴らしさに後押しされ、早速作戦実行。綺麗に存在を抹消すると、いそいそとマルクトへGOです。
ただ、虎視眈々とルルーシュの才能を狙っていたインゴ陛下が突然の死に疑問を持った為か追手もかかりました。が、どうにか誤魔化してマルクトin。何とか無事にケテルブルクへ辿りつき、スザク、ミレイ(とルーベン)と数年ぶりの再会。スザク達は母マリアンヌが殺された経緯に憤り、ナナリーの痛々しい姿に悔し涙を流すも、二人の無事を喜んでくれます。
細かいあれこれはルーベンに託し、一向はアッシュフォードが用意してくれた家へ。ミレイと沙世子さんがあれこれ整えてくれる中、今日からは三人で暮らそうね、スパもあるからナナリーも楽しみながらゆっくり傷を癒せばいいよ、楽しい事で毎日埋めていけば目も見えるようになるよ!と明るく励ますスザクに二人もほんわり。
それからの数年は正に黄金時代――になるはずだったのです、が。
ケテルブルクにはなんと、思わぬ野獣が住んでいました。
ピオニー・ウパラ・マルクトという名の野獣が!!w
突然現れた見目麗しい兄妹と元気のいいその友人に、この野獣が反応しない訳もなく、一悶着も二悶着も起こしながら四人は親しくなっていきます。軟禁状態なのは変わっていないので、飽くまでフランツとして接するピオニー。三人相手に私塾の真似事なんかしてみたり、スザクに剣の手ほどきをしてみたり。ネフリーとナナリーを会わせて両手に花になってみたり(そしてルルーシュに豪快にぼこられたり)。
穏やかだけど何か違う方向でトラブルだらけな日々は数年続き、やがて13歳になったスザクはグランコクマで士官学校へ入る事となり、ルルーシュもアッシュフォードに薦められてナナリーと共にグランコクマで士官学校へ通う事に。
フランツとの別れに涙ぐむ三人に、ピオニーはちょっと後ろめたい気分になりつつも笑って送り出します。「お前達がこの国を護ろうと戦うなら、また会うこともあるさ」と告げて。
それから少し時間が過ぎて、マルクトに新皇帝が即位。
士官学校を卒業したスザクは皇帝付き近衛兵として、ルルーシュは政務官見習いとして王宮に召し上げられます。はっきり言って破格の待遇に戦き、思わず裏を探るルルーシュ。しかし、通達に来た文官は仕方ないと言いたげな笑顔で着任式に全てわかりますよとだけ告げて去ります。
虎穴に入らずんば的精神で王宮に向かった二人を迎えたのは、なんとケテルブルクで別れたはずのフランツでした。
…………と、後はあれこれ騒ぎながら本編まで過ごす事になる訳で。
ホド戦争とかピオニー軟禁時代とか鑑みるとどうしてもルルーシュ達の年齢をあげざるを得なかったww
ルルーシュ、スザクはガイと同い年±1です。ルルーシュはジェイドと嫌味の応酬を繰り返しつつ上手にピオニーの手綱を引き、スザクはその身体能力を如何なく発揮して逃亡するピオニーを捕まえるんでしょうねー。
本編以降はちょろっとだけ考えたのですが、多分和平に向かうのはルルーシュ。直接的な護衛としてスザクが付いてきます。使者ご一行の警護にジェイド率いる第三師団ですが、親書が間に合わなくて合流はセントビナーなんだろうなと。その間に本編軸の事が起こってセントビナーじゃルルーシュによる一大論破祭が発生するよきっと。
ルルーシュはマルクト王国の若き文官。目と脚の不自由な妹と共に首都グランコクマに住み、20歳の若さでありながら、皇帝陛下の有能な秘書官として名を馳せています。一応爵位を与えられてます。宮中伯。家名はランペルージを名乗り、対外的にはケテルブルグ出身となっていますが、実はバチカル出身で王族の一応傍系にあたります。先々先代の王弟の血筋、みたいな。更に母の姉がインゴベルト王の王妃として召し上げられ、それなりの発言権も持った家でした。しかし王妃は出産後儚くなり、その娘も金髪で王家の特徴なんて全く持ってない事からあらぬ不義疑惑を掛けられてしまい、社交界ではちょっと村八分食らってました。
なのでバチカルに対する未練は全く無し。一家揃って王家の特徴なんて全く出なかったので、母の死を切っ掛けにこれ幸いと身分も全て捨てて(更にあれこれ手を回して証拠を消したり捏造した上で)マルクトに亡命しちゃいました。
亡命理由は至って単純、キムラスカは預言遵守派だったから。
幼い頃から聡明だったルルーシュは元々預言に懐疑的だったのですが、それを致命的なものにしたのがホド戦争と母親の死でした。
ホドには母の縁故だったアッシュフォードや、母の友人だったユージェニー・セシルが嫁いだガルディオス家があり、さらにガルディオスの縁で知り合った幼い友人であるスザクが住んでいました。しかし戦争でホドは消失し、アッシュフォードと枢木家はどうにか難を逃れられたもののユージェニーもガルディオス家の家人達も亡くなってしまいました。
キムラスカ・マルクト双方に凄まじい被害を出したホド崩落は、そこで終わると思いきや導師エベノスの介入があるまで続けられました。
ルル的には不可解ですが子供の疑問など大人が相手にしてくれる訳もなく、無邪気に問い続けられる程空気を読む事に疎くもなかったルルは、辛うじて生き残ったスザクや、ミレイたちと鳩のやり取りをしつつ悶々とした時を過ごします。
しかしそれが続いたのも9歳まで。伯母の命日が近いとの事で城に呼び出され、謁見を終えて帰ろうとした一家を凶弾が襲ったのです。その際妹ナナリーを庇い母は死亡、ナナリーは辛うじて存命するも、怪我が元で脚が、そして母の死を目の当たりにした精神的ショックで目が不自由になってしまいました。
悲嘆にくれるルルーシュに、預言士は告げました。「悲しむ必要はありません。これは預言に読まれていた事で、この悲劇を経て人は繁栄へと向かうのだから――」と。
当然ルルーシュは激怒します。預言の為に殺された母。預言のせいで美しいものを見る事も、外を駆ける事も出来なくなった妹。
インゴベルトに訴えても「それが預言に読まれていたのなら仕方ない」と馬鹿げた返答しか返らず、怒りを抑えながら探りを入れてみれば、一家を襲った者達も実は預言遵守の為の行動として殆ど罪らしき罪も問われていなかったのです。更に調べていけば、友人や家族にも等しい人たちが故郷を無くしたホド戦争ですら預言に詠まれていたという事実に行き当たってしまいました。
こんな馬鹿な事が罷り通っていいものか、もしこの先更なる悲劇が詠まれたとしても、それすら容認されるというのか。
悲憤の中、ルルーシュは妹を連れてマルクトへ亡命する事を決意します。ただしマルクトの当時の皇帝はキムラスカと同じく預言遵守派なので、取り敢えず自分達も死んだ事にして暫くマルクトの辺境にでも逃げ込んで、次期皇帝の態度を見てからそっちに付くか否かを決めようと考えました。
グランコクマで暮らすスザクたちにもその旨を鳩で伝えると、スザクはアッシュフォードを通じてスーパーメイド沙世子さんを派遣。何処か探してるならケテルブルクにしない? 俺もいくよ! アッシュフォードも協力してくれるしさとあっさり。お気楽な言葉ではありますが、それでも信頼の置けるスザクの言と沙世子さんの素晴らしさに後押しされ、早速作戦実行。綺麗に存在を抹消すると、いそいそとマルクトへGOです。
ただ、虎視眈々とルルーシュの才能を狙っていたインゴ陛下が突然の死に疑問を持った為か追手もかかりました。が、どうにか誤魔化してマルクトin。何とか無事にケテルブルクへ辿りつき、スザク、ミレイ(とルーベン)と数年ぶりの再会。スザク達は母マリアンヌが殺された経緯に憤り、ナナリーの痛々しい姿に悔し涙を流すも、二人の無事を喜んでくれます。
細かいあれこれはルーベンに託し、一向はアッシュフォードが用意してくれた家へ。ミレイと沙世子さんがあれこれ整えてくれる中、今日からは三人で暮らそうね、スパもあるからナナリーも楽しみながらゆっくり傷を癒せばいいよ、楽しい事で毎日埋めていけば目も見えるようになるよ!と明るく励ますスザクに二人もほんわり。
それからの数年は正に黄金時代――になるはずだったのです、が。
ケテルブルクにはなんと、思わぬ野獣が住んでいました。
ピオニー・ウパラ・マルクトという名の野獣が!!w
突然現れた見目麗しい兄妹と元気のいいその友人に、この野獣が反応しない訳もなく、一悶着も二悶着も起こしながら四人は親しくなっていきます。軟禁状態なのは変わっていないので、飽くまでフランツとして接するピオニー。三人相手に私塾の真似事なんかしてみたり、スザクに剣の手ほどきをしてみたり。ネフリーとナナリーを会わせて両手に花になってみたり(そしてルルーシュに豪快にぼこられたり)。
穏やかだけど何か違う方向でトラブルだらけな日々は数年続き、やがて13歳になったスザクはグランコクマで士官学校へ入る事となり、ルルーシュもアッシュフォードに薦められてナナリーと共にグランコクマで士官学校へ通う事に。
フランツとの別れに涙ぐむ三人に、ピオニーはちょっと後ろめたい気分になりつつも笑って送り出します。「お前達がこの国を護ろうと戦うなら、また会うこともあるさ」と告げて。
それから少し時間が過ぎて、マルクトに新皇帝が即位。
士官学校を卒業したスザクは皇帝付き近衛兵として、ルルーシュは政務官見習いとして王宮に召し上げられます。はっきり言って破格の待遇に戦き、思わず裏を探るルルーシュ。しかし、通達に来た文官は仕方ないと言いたげな笑顔で着任式に全てわかりますよとだけ告げて去ります。
虎穴に入らずんば的精神で王宮に向かった二人を迎えたのは、なんとケテルブルクで別れたはずのフランツでした。
…………と、後はあれこれ騒ぎながら本編まで過ごす事になる訳で。
ホド戦争とかピオニー軟禁時代とか鑑みるとどうしてもルルーシュ達の年齢をあげざるを得なかったww
ルルーシュ、スザクはガイと同い年±1です。ルルーシュはジェイドと嫌味の応酬を繰り返しつつ上手にピオニーの手綱を引き、スザクはその身体能力を如何なく発揮して逃亡するピオニーを捕まえるんでしょうねー。
本編以降はちょろっとだけ考えたのですが、多分和平に向かうのはルルーシュ。直接的な護衛としてスザクが付いてきます。使者ご一行の警護にジェイド率いる第三師団ですが、親書が間に合わなくて合流はセントビナーなんだろうなと。その間に本編軸の事が起こってセントビナーじゃルルーシュによる一大論破祭が発生するよきっと。
2008-06-29 [Sun]
小ネタ、似非現代ファンタジー(何)
気が向いたらこの設定であれこれ書くかもしれない。
気が向いたらこの設定であれこれ書くかもしれない。
この部屋は怪しいし変なにおいがするよねとスザクがぼやき、彼の隣で薬を練っていたルルーシュはといえば、これまた何時もの如く無言でガーゼに練った薬を塗りつけると、患部に思い切り叩き付けた。
「いってぇ!!」
悲鳴を上げて悶絶するスザクをきっぱりと無視したまま、更に指に取った薬を細かい傷にべたりべたりと塗り込める。濁音つきの呻き声もなんのその、蠢く体を押さえつける事もなく器用に包帯を巻き付けガーゼを貼り付け、あっという間に手当てを終えた。
ぐったりと寝台に伏せる背中に、今度は一切の容赦もなく平手を落とし、サイドボードに水と細粒の薬を乗せた薬包紙を置く。
「これを飲んでさっさと寝ろ。藤堂さんにはこちらに泊まると伝えておく」
「……」
「…何だ」
恨めしげな視線が見上げてくるが、いまさらそんなものに戸惑う事もない。腕を組み、真っ向から見下げてくるルルーシュにスザクの目がじりりと据わった。
「…足りない」
「薬の量がか?」
「ちがーうっ!! 優しさが足りないっていってるんだよ! 何あれさっきの!? 傷が深いとか痛むぞとか言ってた癖にやることなんであんな乱暴なの!? 幼馴染が怪我してるんだからもっと優しくしてくれてもいいじゃないか!!」
「ほう? 俺が優しくない、お前はそういうんだな?」
「そうだよ! そう言ってるじゃないか!! 結構血も流れちゃったしこれでも倒れそうなの我慢して来たんだから!」
「なるほど、それは大変だったな。大量に出血するのは生命にかかわることだもんな。…だがな」
ぎゃんぎゃんと叫ぶスザクに柔らかい笑みを浮かべたルルーシュの右手がサイドボードに向けられた。光量を落としたライトの隣に置かれていた時計を繊細な指で摘みあげ、しっかりと握りなおし―――ごっと音を立てるほど乱暴にその鼻っ面に押し付けた。そのまま手加減無しにごりごりと顔面に押し付けられ、どうにかそれをどけようとするが、絶妙な力加減によって動く事が許されない。
何より、見下ろすルルーシュの目がうっすらと酷薄な光を宿し始めたのを見てそれ以上暴れる事が出来ない。
「出血のせいでよく見えていないらしいお前に優しい俺が現在時刻を教えてやろう。午前三時二十八分五秒だ。午後じゃないぞ、午前だ。ちなみにお前が来たのは午前二時四十五分十二秒で俺は当然のことながらナナリーも就寝済みだった。それが突然玄関を蹴破られる轟音で目を覚ました上、優しい天使のようなナナリーはお前が無駄に騒ぐ声に怯えさせられたと言うのに心配で眠れませんと部屋で今も悶々と過ごしているだろうし、俺も俺で寝起きにあれこれ文句をつけられながら自分の睡眠を放棄して傷に合う薬を作り手当てをして痛みで眠れなくならないようにと痛み止めまで調合してやって更に寝床まで提供し、恐らく現場から直行でこっちに来て何の音沙汰もないお前を心配しているだろう家人に代理で連絡を入れてナナリーには大丈夫だったよと安心させてホットミルクを作ってやりお前には明日の朝は怪我にいい食事を作ってやらなければと献立まで考えている。さてそこまでやっても俺は優しくないとお前は叫ぶという事は、お前は俺に額づいてスザク様お労しや不肖このルルーシュが至らぬばかりにスザク様の痛みを取り除く事もならず本当に申し訳ないこの非は我が命をもって償わせていただきとうござると白刃で腹を掻っ捌く位の行動を取れと言いたい訳だな? いいだろう、この日の本の国関東一円を守護するお前の言葉だ、俺も潔く掻っ捌いて見せようじゃないか、ナナリーの事は頼んだぞスザク!!」
「すみませんごめんなさい僕が悪かったです本当にごめんごめんったらルルーシュお願いだからそのナイフ下ろしてえええええええ!!!」
据わった視線と鞘から引き抜かれたナイフの鋭さに、傷の痛みも放り出してその腕に縋る以外スザクにできる事は無かった。
どうにかナイフを鞘に収め直し、額に滲んだ冷や汗を拭いながら寝台に上り直す。
実に無駄に体力を消費した気がすると呟けば、消費したんだとあっさり返事が返ってきた。
取り合えず与えられた痛み止めを呷って水で流し込み、ごろりと仰向けに転がれば、思ったよりも穏やかな視線でルルーシュは隣に立った。
「全く、いつもの事ながら心臓に悪いよルルーシュ………」
「それはこっちの台詞だ。深夜に叩き起こされた上に玄関に血溜まりなんて作られて、ぱっと見ホラーな背景のせいでナナリーが真っ青になるし案の定お前なんぞを心配して随分と不安がっていたし。これでナナリーが寝不足になって明日の朝肌が荒れていたらお前の傷抉ってやるからな」
「……そこに僕の心配は入ってない訳だね…いや、解ってるけどさ…」
この洒落にならない美貌を誇る友人は、極度のシスコンで妹に関わる事以外には殆ど興味を示さない割にその実結構なお人好しだ。こんな風に頼ってくる人間(しかも怪我人)を放り出す事が出来るほど冷たくはなれない。
その証拠にぶつぶつと文句を言いながらも、スザクの身体にシーツをかぶせる手は優しいのだから、何とも素直でないというか不器用というか。
思わずくすくすと笑い出したスザクに、柳眉を寄せてしかめ面になる。
「下らない事を考えてないでさっさと寝ろ。決して軽い傷じゃないんだ、熱も出始めてるだろう。幾らお前が人外な体力を持っているといっても、きちんと休まないと治るものも治らないぞ」
「うん。…………言い忘れてたけど、ありがとう、ルルーシュ」
「……あぁ。お休み、スザク」
かちりとサイドボードのライトが消され、闇の中を小さな足音が遠ざかっていく。
いつもの日常の終わりに、思ったよりも疲れていたらしいスザクの意識は直ぐに沈んでいった。
「いってぇ!!」
悲鳴を上げて悶絶するスザクをきっぱりと無視したまま、更に指に取った薬を細かい傷にべたりべたりと塗り込める。濁音つきの呻き声もなんのその、蠢く体を押さえつける事もなく器用に包帯を巻き付けガーゼを貼り付け、あっという間に手当てを終えた。
ぐったりと寝台に伏せる背中に、今度は一切の容赦もなく平手を落とし、サイドボードに水と細粒の薬を乗せた薬包紙を置く。
「これを飲んでさっさと寝ろ。藤堂さんにはこちらに泊まると伝えておく」
「……」
「…何だ」
恨めしげな視線が見上げてくるが、いまさらそんなものに戸惑う事もない。腕を組み、真っ向から見下げてくるルルーシュにスザクの目がじりりと据わった。
「…足りない」
「薬の量がか?」
「ちがーうっ!! 優しさが足りないっていってるんだよ! 何あれさっきの!? 傷が深いとか痛むぞとか言ってた癖にやることなんであんな乱暴なの!? 幼馴染が怪我してるんだからもっと優しくしてくれてもいいじゃないか!!」
「ほう? 俺が優しくない、お前はそういうんだな?」
「そうだよ! そう言ってるじゃないか!! 結構血も流れちゃったしこれでも倒れそうなの我慢して来たんだから!」
「なるほど、それは大変だったな。大量に出血するのは生命にかかわることだもんな。…だがな」
ぎゃんぎゃんと叫ぶスザクに柔らかい笑みを浮かべたルルーシュの右手がサイドボードに向けられた。光量を落としたライトの隣に置かれていた時計を繊細な指で摘みあげ、しっかりと握りなおし―――ごっと音を立てるほど乱暴にその鼻っ面に押し付けた。そのまま手加減無しにごりごりと顔面に押し付けられ、どうにかそれをどけようとするが、絶妙な力加減によって動く事が許されない。
何より、見下ろすルルーシュの目がうっすらと酷薄な光を宿し始めたのを見てそれ以上暴れる事が出来ない。
「出血のせいでよく見えていないらしいお前に優しい俺が現在時刻を教えてやろう。午前三時二十八分五秒だ。午後じゃないぞ、午前だ。ちなみにお前が来たのは午前二時四十五分十二秒で俺は当然のことながらナナリーも就寝済みだった。それが突然玄関を蹴破られる轟音で目を覚ました上、優しい天使のようなナナリーはお前が無駄に騒ぐ声に怯えさせられたと言うのに心配で眠れませんと部屋で今も悶々と過ごしているだろうし、俺も俺で寝起きにあれこれ文句をつけられながら自分の睡眠を放棄して傷に合う薬を作り手当てをして痛みで眠れなくならないようにと痛み止めまで調合してやって更に寝床まで提供し、恐らく現場から直行でこっちに来て何の音沙汰もないお前を心配しているだろう家人に代理で連絡を入れてナナリーには大丈夫だったよと安心させてホットミルクを作ってやりお前には明日の朝は怪我にいい食事を作ってやらなければと献立まで考えている。さてそこまでやっても俺は優しくないとお前は叫ぶという事は、お前は俺に額づいてスザク様お労しや不肖このルルーシュが至らぬばかりにスザク様の痛みを取り除く事もならず本当に申し訳ないこの非は我が命をもって償わせていただきとうござると白刃で腹を掻っ捌く位の行動を取れと言いたい訳だな? いいだろう、この日の本の国関東一円を守護するお前の言葉だ、俺も潔く掻っ捌いて見せようじゃないか、ナナリーの事は頼んだぞスザク!!」
「すみませんごめんなさい僕が悪かったです本当にごめんごめんったらルルーシュお願いだからそのナイフ下ろしてえええええええ!!!」
据わった視線と鞘から引き抜かれたナイフの鋭さに、傷の痛みも放り出してその腕に縋る以外スザクにできる事は無かった。
どうにかナイフを鞘に収め直し、額に滲んだ冷や汗を拭いながら寝台に上り直す。
実に無駄に体力を消費した気がすると呟けば、消費したんだとあっさり返事が返ってきた。
取り合えず与えられた痛み止めを呷って水で流し込み、ごろりと仰向けに転がれば、思ったよりも穏やかな視線でルルーシュは隣に立った。
「全く、いつもの事ながら心臓に悪いよルルーシュ………」
「それはこっちの台詞だ。深夜に叩き起こされた上に玄関に血溜まりなんて作られて、ぱっと見ホラーな背景のせいでナナリーが真っ青になるし案の定お前なんぞを心配して随分と不安がっていたし。これでナナリーが寝不足になって明日の朝肌が荒れていたらお前の傷抉ってやるからな」
「……そこに僕の心配は入ってない訳だね…いや、解ってるけどさ…」
この洒落にならない美貌を誇る友人は、極度のシスコンで妹に関わる事以外には殆ど興味を示さない割にその実結構なお人好しだ。こんな風に頼ってくる人間(しかも怪我人)を放り出す事が出来るほど冷たくはなれない。
その証拠にぶつぶつと文句を言いながらも、スザクの身体にシーツをかぶせる手は優しいのだから、何とも素直でないというか不器用というか。
思わずくすくすと笑い出したスザクに、柳眉を寄せてしかめ面になる。
「下らない事を考えてないでさっさと寝ろ。決して軽い傷じゃないんだ、熱も出始めてるだろう。幾らお前が人外な体力を持っているといっても、きちんと休まないと治るものも治らないぞ」
「うん。…………言い忘れてたけど、ありがとう、ルルーシュ」
「……あぁ。お休み、スザク」
かちりとサイドボードのライトが消され、闇の中を小さな足音が遠ざかっていく。
いつもの日常の終わりに、思ったよりも疲れていたらしいスザクの意識は直ぐに沈んでいった。
HN:
イタクラ
性別:
非公開
自己紹介:
ルル至上、ルル受。
お陰でそれ以外に対して厳しいことが多いですが、基本的に皆大好きです。スザルル萌ですが、黒騎士ロイドも好物だったりします。
捏造・パラレルネタ、エロよりもグロとか暴言が多いと思われますのでご注意を。
お陰でそれ以外に対して厳しいことが多いですが、基本的に皆大好きです。スザルル萌ですが、黒騎士ロイドも好物だったりします。
捏造・パラレルネタ、エロよりもグロとか暴言が多いと思われますのでご注意を。