2008-10-06 [Mon]
さs(ry
そして短い。
そして短い。
『以上が本国の動きです。―――いかがされますか、ゼロ』
愉快でたまらないと言った声が携帯越しに聞こえてくる。
あのジャーナリストにとって、新たなる織火となるだろう事態は歓迎すべきものなのだろう。ここでもし、秘密裏に来訪した皇族にまでも土をつける事が出来れば、黒の騎士団は更なる評価を得る事が出来る。それと同時に『ゼロ』は高みに上り、侍る彼もまた同じく階段を上るのだから。
彼の脳内で繰り広げられているだろう妄想が容易に理解でき、流石のゼロも苦笑を禁じえない。
「もしも皇子がコーネリアに求められるなら警戒に値すべき事だ。だが今は飽くまでユーフェミアの御守り、恐れる事ではない」
『ですが、』
「皇子の来訪理由を鑑みれば、コーネリアが皇子に助言を求める事はないだろう。あの皇室で生き残ってきた皇子が分不相応に口を挟む事もあるまい。通常調査と監視以外では決して手を出すな」
『……』
「何より本国を離れたとて、あれはシュナイゼルの手駒の一つ。皇子が連れてきた親衛隊も戦力が測れていない今、仕掛けるのは早計だ。恐れるではないが、ヘタに突付いてシュナイゼルに腰を上げられてもたまらないしな」
『解りました。では、監視を続行いたします』
途切れた音に、同じく終話ボタンを押して携帯を閉じる。どうやら我知らず緊張していたらしい。携帯を握った手がうっすらと汗ばんでいることに、ルルーシュは小さく息を洩らし、静かに視線を上げた。
映るのは、個人的な物をごっそりと欠いた、殺風景な部屋。
時間が無い為、最低限のものしか選ばなかった。大半の服や本は置いていく。それでも、見慣れたものがないというだけで酷く空虚に映る。最近は魔女のせいで散らかり気味だったからなおさら。今頃はナナリーの部屋も同じ空虚に包まれている筈だ。
ナナリーを思うと酷く申し訳なくなる。折角得ることの出来た、小さいながらも幸せに包まれた世界だったのに。この先には危険しか待っていないのに。
(………でも、ここに置いていく訳には行かない)
いつアッシュフォードに利用されるかもわからないのだから。
ルーベンやミレイは護ろうとしてくれるだろうが、ミレイの父母がルルーシュ達をよからぬ目で見ている事には早い段階で気づいていた。最近はなにやら手を回そうとしているらしい事も。ミレイが伯爵家との婚約を受け入れているから、その手土産にとでも考えたのだろう。
唇を噛み締めるルルーシュの耳に、軽いノックが届く。応えを返せば、見慣れたメイド服を隙無く身に纏った沙世子が姿を現した。
「失礼いたします。ルルーシュ様、ルーベン様がいらっしゃいました」
「解った……ナナリーは?」
「ナナリー様はお支度を終えられまして、今はお部屋の方にいらっしゃいます」
「そう、か」
礼と共に退出した沙世子を目を細めて見送り、ルルーシュはもう一度部屋を見渡す。
何かを惜しむように。
何かを捨てるように。
やがて、ずっと右手で玩んでいたチェスピースをローテーブルに置くと、トランクを取り部屋を出て行った。
主が消えた部屋に、白のナイトだけが取り残された。
愉快でたまらないと言った声が携帯越しに聞こえてくる。
あのジャーナリストにとって、新たなる織火となるだろう事態は歓迎すべきものなのだろう。ここでもし、秘密裏に来訪した皇族にまでも土をつける事が出来れば、黒の騎士団は更なる評価を得る事が出来る。それと同時に『ゼロ』は高みに上り、侍る彼もまた同じく階段を上るのだから。
彼の脳内で繰り広げられているだろう妄想が容易に理解でき、流石のゼロも苦笑を禁じえない。
「もしも皇子がコーネリアに求められるなら警戒に値すべき事だ。だが今は飽くまでユーフェミアの御守り、恐れる事ではない」
『ですが、』
「皇子の来訪理由を鑑みれば、コーネリアが皇子に助言を求める事はないだろう。あの皇室で生き残ってきた皇子が分不相応に口を挟む事もあるまい。通常調査と監視以外では決して手を出すな」
『……』
「何より本国を離れたとて、あれはシュナイゼルの手駒の一つ。皇子が連れてきた親衛隊も戦力が測れていない今、仕掛けるのは早計だ。恐れるではないが、ヘタに突付いてシュナイゼルに腰を上げられてもたまらないしな」
『解りました。では、監視を続行いたします』
途切れた音に、同じく終話ボタンを押して携帯を閉じる。どうやら我知らず緊張していたらしい。携帯を握った手がうっすらと汗ばんでいることに、ルルーシュは小さく息を洩らし、静かに視線を上げた。
映るのは、個人的な物をごっそりと欠いた、殺風景な部屋。
時間が無い為、最低限のものしか選ばなかった。大半の服や本は置いていく。それでも、見慣れたものがないというだけで酷く空虚に映る。最近は魔女のせいで散らかり気味だったからなおさら。今頃はナナリーの部屋も同じ空虚に包まれている筈だ。
ナナリーを思うと酷く申し訳なくなる。折角得ることの出来た、小さいながらも幸せに包まれた世界だったのに。この先には危険しか待っていないのに。
(………でも、ここに置いていく訳には行かない)
いつアッシュフォードに利用されるかもわからないのだから。
ルーベンやミレイは護ろうとしてくれるだろうが、ミレイの父母がルルーシュ達をよからぬ目で見ている事には早い段階で気づいていた。最近はなにやら手を回そうとしているらしい事も。ミレイが伯爵家との婚約を受け入れているから、その手土産にとでも考えたのだろう。
唇を噛み締めるルルーシュの耳に、軽いノックが届く。応えを返せば、見慣れたメイド服を隙無く身に纏った沙世子が姿を現した。
「失礼いたします。ルルーシュ様、ルーベン様がいらっしゃいました」
「解った……ナナリーは?」
「ナナリー様はお支度を終えられまして、今はお部屋の方にいらっしゃいます」
「そう、か」
礼と共に退出した沙世子を目を細めて見送り、ルルーシュはもう一度部屋を見渡す。
何かを惜しむように。
何かを捨てるように。
やがて、ずっと右手で玩んでいたチェスピースをローテーブルに置くと、トランクを取り部屋を出て行った。
主が消えた部屋に、白のナイトだけが取り残された。
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